登山道を逸れずに

前の投稿にてアウトドアを楽しむ時の行動指針として”Leave No Trace”というものを紹介させていただきましたが、店頭でもよく相談いただく内容のひとつが”登山道とそうでない場所”について。

意外に曖昧で難しいのが”登山道”でもありまして、宮崎県周辺の国立公園でもある霧島山系のジオパーク推進連絡協議会の方ともよく”登山道”についての話をしたりしますが、僕らも「さすがに曖昧だ」と申し訳ないと思いつつ、意見を述べさせていただくこともあるほど”曖昧”な点もあるのが現状です。

少し僕らの店の所感も混在しますが”登山道を逸れないこと”と、山の遊びについてご紹介させていただきます。
少し固い内容になってしまいますが、皆さまが友人同士や仲間と楽しむ際などの参考になれば光栄です。

曖昧な登山道という存在

霧島ジオパークの方ともよくルールやマナーについて話をするのですが、実は登山道のルールというのは曖昧な場合がほとんどで、強い規制を行うと楽しみも制限されたりとバランスが難しいものだと常々感じます。
そんな”登山道”の現状が分かりやすく書かれた書籍で “これでいいのか登山道” というものがありますので、関心ある方は読んでみてください。

細かに言えば「国有林であれば云々」だとか色々とありますが、ここでは登山道を逸れずに行動する目的と、その背景などを普通に歩いて楽しむ方が分かりやすいように少しだけ紹介します。

植生・景観の保護

高千穂峰の登山道

高千穂峰の登山道

“登山道がグチャグチャで歩きづらい” , “ジグザグしていてショートカットした方が早い”など、山を歩いているとそんな気持ちになることがありますが、基本的に登山道を逸れることは推奨されておらず、国立公園でもある霧島のフィールドでは以下のマナーを順守してくださいと明記されています。

  1. 登山道からはずれない
  2. ゴミは持ち帰ろう
  3. トイレは登山口か携帯トイレで
  4. 火の使用には気をつけて
  5. 植物や動物をとらない
  6. シカにエサをあたえない
  7. 外来生物を持ち込まない
  8. ストック・アイゼンの使用について

フィールドマナーのページでは登山道をはずれない目的として、”決められた登山道から外れて歩くと、まわりの草木を踏みつけて傷つけてしまいます。写真も登山道からとりましょう”と、ひとつのマナーとして明記されています。
また国立公園では歩道の適正な維持管理や歩道周辺の自然環境への影響のない環境を維持できるよう、日々職員の方々が尽力されています。

しかしまだまだ認知されていない面も多く、最近では登山道以外のコースへの行き方や、例えば韓国岳の火口への降り方などについて店頭でも質問を受けることがあります。
登山道を逸れる行為や登山道以外のコースへの侵入などについては、霧島ジオパークの方々ともよく話をさせていただきますが「現時点で罰則を設けている訳ではないが、国立公園のルールとして守ってくださいとしています」ということは明確にお答えいただいています。
※なお、植物の損傷や採取については厳しく規制されています。

植生や景観の保護の観点から、登山道を逸れないことはフィールドでのマナーとなっており、”Leave No Trace”の行動指針でも明確に推奨されています。

“たかが人の歩いた後”ですが、登山道以外の箇所に踏み跡が残り、多くの方が道を逸れて行動するようになれば、雨天時にはその踏み跡に雨水が流れて登山道が侵食されていきます。
“デカい山のたった1つの道”なんて思っていた時期が実は僕にもありますが、近年の異常気象などでは大きく登山道が景観を変えてしまった場所も多く存在しますし、歩いて美しい道ではなくなってしまいます。

気づかずに道を逸れていたということも行動時には発生してしまったり、どうしても滑ることが怖くて道を逸れてしまうこともあると思いますが、自分以外の方が訪れた時にも感動を楽しめるように、美しい登山道をみんなで維持していこうというのは国内だけでなく各地で考えられていることで、南九州でもしっかりとマナーを理解しながら楽しんでいきましょう。

景観とルールのバランス

霧島山系で登山道以外のコースを行動しているという事例は店頭でもよく耳にすることで、その要因のひとつとしては人目につく場所だからということが挙げられると思います。
中には「新燃岳に登っている人がいる」という報告もあり時折驚きますが、同様に霧島ジオパークへもそうした報告を受けることは多いようで、最近では地図アプリやSNSにルートなどが公開されることで、より目立っている印象を受けます。
※新燃岳についてはマナー云々ではなく明確に禁止されているエリアです。

そうした事例に対処するための「立入禁止」の看板やロープ類などは、極力景観を損ねないように配慮したいというのが、霧島ジオパークの方々の想いだと伺いました。
できる限り仰々しい看板などを避けて、自然の景観を損ねないようにマナーを守って行動いただきたいという霧島ジオパークの方々の想いに応えられるよう、僕ら自然を楽しむ側がしっかりとルールやマナーを共有しあっていけると良いなと思うものですが、霧島だけでなく各地でこうした景観とルール周知のバランスについては頭を抱えていると感じます。

整備

また国立公園内では登山道に明確に管理者を設けて整備が行われており、霧島では現在”登山道”として管理している箇所を、以下のリンク先にて明確に出しています。

近年では”近自然工法”という形で、自然本来の姿に近い形で修繕する登山道の修繕が、宮崎近郊でも霧島をはじめ祖母山周辺やその他地域でも少しずつ広がっており、霧島山系でも日々整備に尽力される方々の存在があります。
僕らは整備いただいている方々との付き合いもあるだけに、登山道を逸れて行動することは、整備に尽力されている方々への負担を高めてしまう結果にも繋がるなと感じます。
僕ら遊ぶ側のマナー理解などが、より良い景観を維持していることに繋がると思えば安いものです。

バリエーションルートや登山道以外の箇所での活動

ここから先が何とも表現が難しいところでもあるのですが、山のアクティビティにはバリエーションルートをはじめ、クライミング・渓流釣り・沢登りなど、そもそも登山道以外の箇所での活動も存在しています。
見たことのない風景、何とも言えない冒険心にワクワクする方も多いと思います。また、そもそも登山道というものが存在していないエリア、さらには正式な登山道かすら分からない場所など、”良し悪しの判断が難しい”という状況もあります。

こういう状況では極めてグレーなことも多いのですが、人目につく場所では避けておく。というのは、僕個人的には無難だと思っています…汗
(僕の個人的考え方も曖昧で大変恐縮ですが)

僕らは店という立場上、少し曖昧なところを避けていることもありますが「久々に行きたいな」という場所もやっぱり存在しますし、様々な方が迫力の写真を出して自慢したい気持ちも分かります。

登山道以外の活動においては、写真などを投稿して楽しみつつも”場所やルートの公開は危険を伴うので控えておく”というのが、何となく多くの方の共通認識なような気もしますが、それすらも”曖昧”なものなので「難しいものですねぇ」なんて、霧島ジオパークの方ともよく話をします。

と、山には曖昧なルールが多いもので、厳密にルールを作るほどにダメになりかねない行為というのが存在してしまうのも現状かなと感じることがあります。


と、何とも結論のないような話になりましたが、少なくとも人が多く訪れる登山道では、道を逸れずに行動して楽しむことは、自然や景観へのダメージを軽減することに繋がりますし、整備いただいている方々へ感謝の気持ちを持って楽しむことは、ひとつの大切なポイントだと思います。

それ以外の場所においては、それぞれのアクティビティを楽しむ方々との付き合いを通して、マナーやルール化されているものを理解しながら、お互いが気持ちよく楽しめるように配慮しながら遊ぶことで問題は避けられると思います。

基本的にこうした面倒なことを理解しながら、情報をお伝えしていくのは僕らのような店や各地域の方々の仕事だと思っていますので、何となく「道は逸れちゃダメなんだ」ということを知っておく程度で十分だと思いますが、分からないことがあれば気軽に専門店やベテランの方々などに聞いてみてください。

山も川も海も、自然のフィールドでは著しくマナーが守られていない行為や、近隣の住民の方への迷惑行為などが起きてしまえば、そのエリア自体が使用できなくなったりというケースも存在します。そうしたことが起きないように、皆さまとマナーよく楽しむことができれば幸いです。

よく聞かれる内容だったので、少し頑張って更新しました。


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